「ゆずるは」って、珍しい名前ですね。
イベントやブログで、この名前を見た方からよく聞かれます。
「『ゆずりは』じゃないんですか?」
実は、その質問をいただくたびに少し嬉しくなります。
「どうして“ゆずるは”なんですか?」
そう聞いていただけることが、この名前に込めた想いをお話しするきっかけになるからです。
ブランドを立ち上げると決めたとき、最初に悩んだのが名前でした。
私たちらしい名前って何だろう。
着物リメイクの想いが伝わる名前はどんな名前だろう。
カフェでランチをしながら、メモ帳を広げ、スマートフォンで調べ、古語辞典をめくる。
「これは?」
「こっちもいいね。」
そんな会話を何度も繰り返しました。
家に帰ってからも、それぞれ子どもたちに相談したり、LINEで候補を送り合ったり。
みんなにも一緒に考えてもらいました。
でも、どれも何かが違う。
響きはいいけれど意味がしっくりこなかったり、意味は素敵でも覚えてもらいにくかったり。
なかなか「これだ」と思える名前には出会えませんでした。
最後まで残った候補は三つ。
「邂逅(たまさか)」
「ゆえをはむ」
そして、「ゆずるは」。
どれも古語ならではの美しい響きがありました。
でも、「邂逅」は漢字が難しく、「ゆえをはむ」は意味が伝わりにくい。
最後に残ったのは、「ゆずるは」でした。
決め手になったのは、響きでも、おしゃれさでもありません。
意味でした。
「ゆずるは」のもとになった植物「譲葉(ユズリハ)」は、新しい葉が育つまで古い葉が落ちないことで知られています。
新しい葉がしっかり育ってから、古い葉は安心したように役目を終える。
その姿から、代々受け継がれていくことや、次の世代へつないでいくことの象徴とされ、お正月の縁起物としても親しまれてきました。
私たちが大切にしたい着物も、どこかその姿と重なって見えました。
大切に受け継がれてきた着物。
役目を終えたように見えても、まだ終わりではない。
形を変えれば、また誰かの日常の中で生き続けることができる。
そんな想いを、この名前に重ねました。
そしてもう一つ、私たちには小さなこだわりがありました。
今では「ユズリハ」と呼ばれることが多い植物ですが、古くは「ゆずるは」とも呼ばれていました。
古語辞典を読んでいて、そのやわらかな響きに惹かれたのです。
「り」ではなく「る」。
たった一文字の違いですが、どこかやさしく、あたたかい。
私たちが目指したいブランドの雰囲気にも、よく似ていました。
名前を決めた頃は、「いい名前だね」と思うくらいでした。
でも、作品を作り、お客様と出会い、少しずつ歩んできた今は、この名前に少しずつ育ててもらっているような気がしています。
「ゆずるは」という名前に恥じないものづくりをしたい。
着物に込められた想いも、その先にある時間も、大切につないでいきたい。
そんな気持ちは、この名前を決めた日より、今の方がずっと強くなっています。
だからこれからも、「ゆずるは」という名前を大切に育てながら、一つひとつ丁寧にものづくりを続けていきたいと思います。
作品の一覧は、オンラインショップ(BASE)でご覧いただけます。
制作の日々は Instagram でも綴っています。
時を結ぶ ゆずるは郡上
写真(ユズリハ): A. Barra(Wikimedia Commons / CC BY 3.0)

