「これ、おばあちゃんがよく着ていた着物だわ。」
小さな作品を手にした母が、懐かしそうにそう言いました。
その表情は、嬉しそうでもあり、少しだけ寂しそうでもありました。
母は作品をそっと撫でながら、しばらく祖母の話をしてくれました。
私は、その姿を見て胸が熱くなりました。
形は変わっても、着物は思い出までなくしてしまうわけではない。
むしろ、身近なものになることで、大切な人を思い出す時間をそっと連れてきてくれるのかもしれない。
そんなふうに感じた瞬間でした。
私たちは、子育てを通して長い時間を一緒に過ごしてきた仲間です。
それぞれ違う土地から郡上八幡へ嫁ぎ、子どもたちの成長を見守りながら、気づけば何十年という時間を共にしてきました。
友人とも少し違う。
家族とも少し違う。
親戚と家族の間のような、不思議で心地よい関係です。
子どもたちが少しずつ巣立ち、それぞれの暮らしが始まった頃。
「何か一緒に始めてみない?」
そんな何気ない一言から、私たちの新しい時間も動き始めました。
ものづくりが好きな人。
形を考えることが得意な人。
人に届ける方法を考える人。
得意なことは違っても、長い時間を一緒に過ごしてきたからこそ、お互いを信頼し、それぞれの役割を自然に認め合える関係でした。
着物との関わり方も、それぞれ少しずつ違います。
でも共通していたのは、「着物には、その人の時間が宿っている」と感じていたこと。
着る人が少なくなった今、「もう着ないから」と託される着物は少なくありません。
大切だから捨てられない。
でも、このまましまっておくのももったいない。
そんな着物を前にするたび、私たちは思いました。
新しい服を買うのではなく、今ある着物を、今の暮らしに合わせて楽しめたら。
形見の着物も、たんすの中で眺めるだけではなく、身につけることで、大切な人をもっと近くに感じられたら。
私たちが作りたいのは、ただのリメイク作品ではありません。
少し厄介になってしまった大切なものを、毎日の暮らしの中で使える大切なものへとつなぐお手伝いです。
そして、その先で誰かが笑顔になったり、懐かしい思い出をそっと思い出したり。
そんな時間まで届けられたら、それ以上に嬉しいことはありません。
「ゆずるは」は、そんな想いから生まれました。
この場所では、作品のことだけでなく、着物にまつわる思い出や、ものづくりの日々、私たちの歩みも少しずつ綴っていきます。
もし、ご自宅に「捨てられないけれど、このまましまっておくのも……」と気になっている着物がありましたら、その着物に込められた想いも一緒に、私たちに託していただけたら嬉しいです。
形は変わっても、その時間は、これからも誰かの暮らしの中で生き続けていけると、私たちは信じています。
作品の一覧は、オンラインショップ(BASE)でご覧いただけます。
制作の日々は Instagram でも綴っています。
時を結ぶ ゆずるは郡上
