着物リメイクを始めた頃、母に聞いてみました。
「もう着ない着物があったら、譲ってもらえない?」
すると母は、タンスから何枚もの着物を出してくれました。
「これはもう着ないからいいよ。」
「これは、まだ着られるかな。」
「これはおばあちゃんの着物だから、取っておきたいな。」
一枚ずつ手に取りながら、思い出を話してくれます。
その中の一枚を見て、母が言いました。
「これ、あなたたちのお宮参りのときに着た着物だよ。」
そう言われて見ると、母乳や汗のシミがあちこちに残っていました。
「よく着たなぁ。」
そう懐かしそうに笑いながら、
「もう着ないから、リメイクに使って。」
と渡してくれました。
思い出がたくさん詰まった着物です。
本当に使ってしまっていいのかな。
そんな気持ちもありました。
でも、その着物は母と私たち姉妹をつないでくれた一枚のように思えたんです。
だから、この着物で母のものを作りたい。
そう思いました。
最初に作ったのは、エコバッグでした。
毎日使ってもらえたら嬉しいな、と思って。
でも、シルクのパジャマの心地よさを知っていた私は、すぐに別のことを思いつきました。
「パジャマの方が、もっとそばにいられる。」
毎日身につけて、眠る時間も一緒に過ごせる。
そんな一着になったら素敵だなと思ったんです。
ただ、その訪問着は刺繍も入った華やかな着物でした。
刺繍が肌に当たらないように裏地をつけるなど、パジャマとして心地よく着てもらえるよう工夫しながら仕立てました。
完成したパジャマを見た母は、
「もったいなくて着られない。」
と、なかなか袖を通してくれませんでした。
せっかく作ったのだから着てほしい。
それ以上に、思い出の着物だからこそ、しまっておくのではなく、毎日の暮らしの中で身につけてほしい。
そんな気持ちでした。
しばらくは、お友達や家族に見せて楽しんでいたようですが、そのあと、ようやく着てくれるようになりました。
ある日、妹がそのパジャマを見て、
「上下で着たら派手じゃない?」
と言ったそうです。
どうやら洋服だと思ったみたいで。
「これはパジャマだよ。」
そんなやり取りを聞いて、思わず笑ってしまいました。
今では母のお気に入りの一着になっています。
子育ての思い出が残る着物。
その着物は形を変えて、今も母の毎日に寄り添ってくれています。
それが、私にはとても嬉しいことでした。
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制作の日々は Instagram でも綴っています。
時を結ぶ ゆずるは郡上
